銅は電気・熱をよく通し、柔らかく相手面になじむ性質から、ガスケット・パッキンなどの密封部品や、バスバーなどの通電部品に古くから使われてきました。一方で「どの銅を選べばよいか」「加工硬化した銅で本当に密封できるのか」「銅は高いのでアルミに置き換えられないか」といったご相談も多くいただきます。

トルク工業では銅・アルミ製品を中心としたプレス加工を行っているため、豊富な実績と加工ノウハウがございます。お気軽にご相談ください。

銅がパッキン・ガスケット・バスバーに使われる理由

銅が機能部品に選ばれる理由は、大きく次の3点に集約されます。

  • 柔らかさ(展延性):
    締め付け時に相手面の微細な凹凸に食い込んで変形し、金属同士で高い密封性を確保できる。ゴムやシート材が使えない高温・高圧・オイル環境に強い。
  • 導電性:
    純銅の導電率はIACS 100%前後で、実用金属では銀に次ぐ。バスバーや端子など、大電流を低損失で流す部品に最適。
  • 熱伝導性・耐食性:
    熱を逃がしやすく、大気中や水環境で安定した酸化被膜を作るため、長期使用でも劣化しにくい。

ただし、これらの特性は「銅の種類」と「材料の硬さ(質別)」で大きく変わります。特に密封部品では、軟質材(O材)を素材段階で正しく選定できているかが性能を左右します。

用途別に見る銅プレス加工品のポイント

銅パッキン・銅ガスケット(メタルガスケット)

ドレンプラグ、油圧配管の継手、燃料・冷却系統のシール、圧力容器のフランジなどに使われる平ワッシャー状・リング状の密封部品です。「銅パッキン」「銅ガスケット」「銅ワッシャー」は現場ごとに呼び方が異なりますが、指しているものはほぼ同じです。

重要なのは、銅ガスケットは「潰れて密封する」部品だという点です。硬い材料で作られたガスケットは相手面になじまず、締め付けトルクを上げても漏れが止まらない、あるいは相手面(アルミブロックなど)を傷めるといった不具合につながります。

このため、銅ガスケットは軟質のO材(焼鈍材)を素材として選定し、打ち抜き主体のプレス加工で製作するのが一般的です。打ち抜きによる加工硬化は切断面近傍に限られるため、材料段階で軟質材を選んでおけば密封面の柔らかさは保たれます。図面に「軟質」「O材」「HV○○以下」などの硬さ指定がある場合は、材料のミルシートで硬さを担保できるかを含め、加工先に確認しておくと安心です。あわせて、平面度とバリの管理が密封性を大きく左右します。

銅バスバー

配電盤、インバータ、バッテリーモジュール、モーターの通電部などで、電線の代わりに大電流を流す板状の導体です。打ち抜き・曲げ・穴あけのプレス加工で製作されることが多く、以下がポイントになります。

  • 材質は導電率を優先し、C1100(タフピッチ銅)またはC1020(無酸素銅)が主流
  • 接触面の平面度とバリの管理(バリは接触抵抗と絶縁不良の原因)
  • 曲げ部の割れ防止(曲げ半径と圧延方向の考慮)
  • スズめっき・ニッケルめっき・銀めっきなどの表面処理(酸化防止、接触抵抗の安定化)

端子・接点・銅ワッシャー

小型の端子や接点板、アース用の銅ワッシャーなども銅プレス加工の代表例です。ばね性が必要な部品はりん青銅や黄銅、導電性が最優先の部品は純銅と、機能に応じて材料を使い分けます。

銅プレス加工で使われる銅の種類

「銅」と一口に言っても、プレス加工で使われる材料は純銅系と銅合金系に分かれます。代表的なものを整理します。

JIS記号/通称分類主な特徴主な用途
C1100 タフピッチ銅純銅導電率・熱伝導率が高く、入手性・価格に優れる汎用材。酸素を含むため高温水素雰囲気で脆化(水素脆性)する点に注意。銅バスバー、電気部品、銅ガスケット・パッキン、放熱部品
C1020 無酸素銅(OFC)純銅酸素をほぼ含まず、導電率・展延性が最も高い。水素脆性がなく、真空・高温ろう付け用途にも適する。高信頼バスバー、電子部品、真空機器、ろう付け部品
C1220 りん脱酸銅純銅りんで脱酸したもので溶接・ろう付け性が良い。導電率はタフピッチ銅よりやや低い。配管・熱交換部品、ろう付けを伴うガスケット類
C2600/C2801 黄銅(真鍮)銅合金銅に亜鉛を加えた合金。強度・切削性・プレス性が良く安価。導電率は純銅の約1/4〜1/3。端子、ワッシャー、装飾・機構部品、ガス機器部品
C5191 りん青銅銅合金ばね性・耐疲労性・耐食性に優れる。導電率は純銅の約15%程度。接点ばね、コネクタ端子、スイッチ部品
C1720 ベリリウム銅銅合金時効硬化で銅合金中最高クラスの強度・ばね性。高価で取り扱いに注意が必要。高信頼接点ばね、精密機構部品

質別(O材・H材)の違いも重要

同じC1100でも、焼きなました軟質のO材と、圧延で硬化した1/4H・1/2H・H材では、硬さ・ばね性・密封性がまったく異なります。

•   銅ガスケット・パッキン:密封性を優先し、素材段階で軟質のO材を選定する。

•   銅バスバー:形状保持や取り付け剛性のため1/2H〜H材を選ぶことが多いが、大きな曲げがある場合はO材や1/4H材を使う。

•   端子・接点:ばね性を確保するためH材やりん青銅を選ぶ。

材料選定に迷った場合は、「密封するのか」「電気を流すのか」「ばねとして働くのか」という機能から逆算するのが確実です。

銅プレス加工の技術的な注意点

銅は柔らかく加工しやすい反面、鉄やステンレスとは異なる注意点があります。

•   加工硬化が大きい:曲げ・絞りを伴う形状では硬さが上がる。密封部品は軟質材を用い、硬さ指定がある部品では材料選定と工程設計で硬さを管理する。硬さ指定が厳しい部品では、加工後の焼きなましで調整する場合もある。

•   金型へのかじり・凝着:柔らかい銅は工具に凝着しやすく、金型のクリアランス設計と潤滑の管理が品質を左右する。

•   バリ・だれの管理:柔らかい材料はバリが出やすい。バスバーでは絶縁・接触不良、ガスケットでは密封不良に直結するため、金型メンテナンスと検査基準が重要。

•   スプリングバックは小さい:曲げ精度は出しやすいが、H材ではある程度の戻りを見込む。

•   酸化・変色:加工後に指紋や酸化で変色しやすく、防錆・洗浄・めっきなど後工程の設計が必要。

代替材としてのアルミについて

銅の価格高騰や軽量化ニーズから、「銅をアルミに代替できないか」というご相談が増えています。結論としては、用途によって置き換えられるものと、置き換えにくいものがあります。

比較項目銅(C1100)アルミ(A1050/A1100)補足
比重約8.9約2.7アルミは銅の約1/3の重さ
導電率(IACS)約100%約60%同じ電流を流すにはアルミは断面積約1.6倍が必要
熱伝導率高い銅の約55〜60%放熱部品では体積でカバーできる場合あり
柔らかさ・密封性軟質にすると非常に良い軟質材はさらに柔らかく良好アルミガスケットは低圧・低温用途で広く使われる
耐熱性高い(融点約1085℃)低い(融点約660℃)高温部の密封・通電はアルミが不利
材料コスト高い低い同重量比較。体積換算では差が縮まる
電食(ガルバニック腐食)相手がアルミだと腐食を誘発相手が銅・鉄だと自身が腐食異種金属接触環境では表面処理や絶縁が必須

アルミガスケット・アルミパッキンへの置き換え

ドレンプラグや低圧配管など、締め付け面がアルミ製で高温にさらされない部位では、アルミワッシャー・アルミガスケット(A1050、A1100の軟質材)が銅の代替として定着しています。相手面がアルミの場合、銅ガスケットは電食を起こす可能性があるため、むしろアルミの方が適していることもあります。

一方、高温の排気系、高圧の油圧系、繰り返し締め直しが必要な部位では、耐熱性・強度・繰り返し使用性で銅が優位です。

アルミバスバーへの置き換え

電気自動車のバッテリーや大型配電盤では、軽量化とコストの観点からアルミバスバー(A1070、A6101など)の採用が進んでいます。ただし断面積の増加、接続部の酸化被膜対策(接触抵抗の増大)、銅端子との接続部での電食対策が必要で、設計の見直しが前提になります。省スペースや高い接続信頼性が求められる部位では、引き続き銅が選ばれています。

置き換え判断の目安

•   軽量化・コスト優先で、温度・圧力・電流密度に余裕がある → アルミ代替を検討

•   高温・高圧・大電流・繰り返し使用・省スペース → 銅を維持

•   相手面がアルミ → 電食の観点でアルミ側も検討

•   いずれの場合も、試作で密封性・通電性を確認してから量産に移行するのが安全

トルク工業の銅プレス加工・銅ガスケット対応

トルク工業は、精密プレス加工を中核に、メタルガスケット・シーリングワッシャーなどのシール機能部品を製造しています。銅ガスケットは軟質材の選定と平面度・バリ管理を徹底した精密打ち抜きで対応し、硬さ指定のある銅製品やシーリングワッシャーについては社内の低温焼鈍で硬さを管理できる点が特長です。

  • 対応材質:タフピッチ銅・無酸素銅・りん脱酸銅・黄銅・りん青銅など。
    ※実績のある材質をご確認ください
  • 金型は社内設計。試作から量産まで対応。
  • アルミ・鉄・ステンレスも対応しており、銅からの材料置き換えのご相談も可能。

銅製品のプレス加工ならトルク工業へ

銅パッキン・銅ガスケット・銅バスバーは、いずれも「銅の柔らかさ」や「導電性」を活かす機能部品であり、材料の種類と質別の選定、そして平面度・バリなどのプレス品質が性能を決めます。アルミは軽量化・コストの面で有力な代替材ですが、耐熱性・電流密度・電食の観点から適用範囲を見極める必要があります。

「銅ガスケットの密封不良に悩んでいる」「図面の硬さ指定に対応できる加工先が見つからない」「銅とアルミのどちらを選ぶべきか迷っている」といった場合は、シール機能部品の精密プレス加工を手がけるトルク工業までお気軽にご相談ください。