割れ・しわを抑え、形状と寸法を安定させるプレス技術

トルク工業では、ブラケット・カバー・ヒートシンク・シールドケースなど、各種金属部品の絞り・張り出し・バーリング加工に対応しています。

平らな板材に凸形状・段差・穴縁の立ち上がりをつくる加工は、割れ・しわ・板厚の減少など、材料の変形を精密にコントロールする必要がある難易度の高い加工です。トルク工業では、金型の自社設計と工程設計、そして成形後の残留応力を除去し、割れや変形を防ぐ社内の低温焼きなましを組み合わせ、成形部品を安定した品質で量産しています。

対応範囲について:当社が得意とするのは、浅い絞り・張り出し・バーリングなど「板材の一部を成形して形状をつくる」加工です。カップ・筒状などの高さのある深絞り部品は対応しておりません。

絞り加工・張り出し加工とは

絞り加工とは、平らな板材(ブランク)をパンチでダイに押し込み、継ぎ目のない立体形状に成形するプレス加工です。板材の外周部(フランジ)がダイの中に引き込まれて側壁を形成します。当社では、製品の高さが比較的低い「絞り」を中心に対応しています。

張り出し加工とは、フランジをしわ押さえで固定したまま、板材そのものを伸ばして凸形状をつくる加工です。材料が引き込まれない点が絞りとの違いで、ビード・エンボス・浅いドーム形状などに用いられます。

バーリング加工とは、下穴の縁を立ち上げてフランジ(つば)を形成する加工です。タップ穴の有効ねじ長さの確保、軸受・パイプの嵌合部、放熱・補強リブなどに使われます。

いずれも溶接や切削で作る場合と比べ、継ぎ目がなく、部品点数を減らせ、材料の歩留まりが良く、量産性が高いのが特徴です。自動車部品、電装部品のカバー、センサーブラケット、ヒートシンク、シールドケースなど、幅広い製品に使用されています。

対応する成形加工の主な種類

種類内容主な製品
絞り(円形・角形・異形)製品の高さが直径・幅に対して小さい絞り。絞り工程は1工程~3工程まで実績あり。角形はコーナー部の割れ・しわを抑える金型設計が必要。カバー、シェル、浅い箱形ケース、シールドケース
張り出し加工フランジを固定したまま材料を伸ばして膨らませる。材料は引き込まれず板厚が減少するため、伸び量の管理が重要浅い凸形状、ドーム、補強リブ
エンボス・ビード加工局所的な凸凹や細長い突起を成形し、剛性の向上・位置決め・意匠性を付与するブラケット、カバー、ヒートシンク
バーリング加工下穴の縁を立ち上げてフランジを形成する。下穴径・板厚・立ち上げ高さのバランスで縁割れを防ぐタップ穴付き部品、軸受部、パイプ嵌合部
段付け・半抜き加工板材の一部をずらして段差やダボを形成する位置決め部品、かしめ部品

※ カップ・筒状の深絞り、しごき(アイアニング)は対応範囲外です。

成形加工の限界の目安

絞り・張り出し・バーリングのいずれも、1工程で成形できる範囲には限界があり、これを超えると材料が破断します。

  • 絞りの深さ
    絞り比(ブランク直径 ÷ パンチ直径)が大きくなるほど割れやすくなります。当社では絞り工程は1工程~3工程まで実績あります。
  • 張り出しの高さ
    張り出しでは材料が引き込まれないため、板厚の減少で高さが制限されます。材料の伸び特性(延性)と形状のRで成形限界が決まります。
  • バーリングの立ち上げ高さ
    下穴を拡げて立ち上げるため、穴縁の伸び(穴拡げ率)が限界を決めます。下穴の加工状態(バリ・破断面の向き)も割れに影響します。

※ 成形限界は材質・板厚・金型条件により異なります。図面をお送りいただければ、成形可否を確認のうえご回答します。

成形加工で発生しやすい不良と原因

  • 割れ・破断
    パンチ肩部(凸形状の角)付近で材料が引きちぎれる不良です。成形高さが大きすぎる、しわ押さえ力が強すぎる、パンチR・ダイRが小さすぎる、潤滑不足、材料の延性不足などが原因になります。
  • しわ
    フランジ部に発生する波状の変形です。フランジ部の材料が圧縮されて座屈することで生じ、しわ押さえ力の不足、クリアランスの過大、ダイRの過大などが原因になります。割れとしわは対策が相反するため、両者のバランスをとることが成形加工の核心です。
  • 板厚の減少
    張り出し加工では、凸部の頂点や角付近の板厚が薄くなります。強度や板厚の要求がある製品では、形状のRや成形高さを含めた工程設計が必要です。
  • バーリングの縁割れ
    立ち上げ部の先端に発生する割れです。下穴径が小さすぎる、下穴のバリ・破断面の向きが不適切、立ち上げ高さが過大などが原因になります。
  • 傷・カジリ
    材料と金型の摩擦により、成形面に傷や焼き付きが生じます。ステンレスやアルミで発生しやすく、金型の表面処理や潤滑の管理が必要です。
  • 経時変形・スプリングバック
    成形後の製品に残った残留応力が、時間の経過や後工程で変形を引き起こす現象です。平面度や寸法精度が求められる製品では、応力除去が必要になります。

成形加工の技術ポイント

  • しわ押さえ力の最適化
    しわ押さえ力が弱いとしわ、強いと割れが発生します。材質・板厚・成形高さに応じて、両者の中間となる適正な範囲に設定します。
  • パンチR・ダイRとクリアランスの設計
    ダイRは材料の流入抵抗、パンチRは凸部の破断に影響します。板厚とのバランスで最適な値を設計し、クリアランスは板厚に対して適切な余裕を持たせます。
  • バーリングの下穴設計
    下穴径・立ち上げ高さ・板厚の関係から、縁割れが出ない下穴径を設定します。下穴の打ち抜き方向をバーリング方向と合わせることで、破断面側からの割れを防ぎます。
  • 材料の選定
    成形加工には延性の高い材料が適しています。鉄では絞り用鋼板(SPCD)、ステンレスではSUS304、アルミではA1050・A5052などが一般的です。
  • 潤滑の管理
    プレス油の種類・塗布量は、割れ・傷・カジリに直結します。材質と加工内容に合わせて管理します。
  • 成形後の焼きなまし
    成形加工では材料が加工硬化し、残留応力が残ります。成形後に焼きなましを行うことで、残留応力の除去、経時変形の防止、寸法の安定化を図ります。

トルク工業の絞り・張り出し加工の特徴

プレス金型の自社設計

製品の形状・材質・板厚に合わせ、しわ押さえ・R・クリアランス・下穴を最適化した金型を自社で設計します。トライ結果をもとにした金型調整も社内で行います。

絞り・張り出し・バーリングに対応

浅い絞りに加え、張り出し・エンボス・ビード・バーリングなど、板材の一部を成形する加工を得意としています。角形の絞りではコーナー部の割れ・しわを抑える金型設計を行います。

精密プレス(〜200tクラス)による量産

自動車部品で培った量産ノウハウをもとに、〜200tクラスのプレス機で、成形部品を安定した品質で量産します。

低温焼きなましで割れ・変形を防止

成形後の残留応力を社内の低温焼きなましで除去し、経時変形や後工程での割れを防止します。図面で硬さが規定される製品では、硬さの管理にも対応します。

多様な材質の成形に対応

銅・アルミ・鉄(SPCC・SPHC・SECCなど)、ステンレス(SUS304・SUS430など)、パーマロイの成形加工に対応します。材質ごとの延性・加工硬化特性を踏まえた工程設計を行います。

抜き・曲げとの複合加工

絞り・張り出し・バーリングと打ち抜き・曲げ・ビード加工などを組み合わせ、穴あけや側面の形状を一体で成形します。

絞り・張り出し加工の主な製品

トルク工業では、以下のような成形部品を製造しています。

ブラケット・ステー

エンボス・ビード・バーリングで剛性と取付機能を持たせたブラケット類です。

カバー・シェル

絞り・異形絞りによるカバー・シェル部品です。

ヒートシンク・シールドケース

張り出し・絞りと抜き・曲げを組み合わせた放熱部品・基板用シールドケースです。

バーリング付き部品

タップ穴・軸受部・パイプ嵌合部など、穴縁を立ち上げた部品です。

絞り・張り出し加工に関するよくあるご相談

成形品で割れ・しわが出て困っている

しわ押さえ力・R・クリアランス・工程設計・材料・潤滑を確認のうえ、金型設計の見直しや焼きなましの活用をご提案します。

この形状は張り出しで成形できるか

材料の延性と形状のRから成形可否を確認します。板厚減少が問題になる場合は、形状の変更もあわせてご提案します。

バーリングの縁が割れる

下穴径・下穴の打ち抜き方向・立ち上げ高さを見直し、縁割れを抑える工程をご提案します。

浅い角形のカバーを絞りで作りたい

角形の絞りに対応しています。コーナー部の割れ・しわを抑える金型設計を行います。

成形後に変形して寸法が出ない

残留応力による経時変形の可能性があります。成形後の低温焼きなましによる応力除去をご提案します。

溶接品・切削品をプレス成形品に置き換えたい

継ぎ目のない一体成形により、部品点数削減・コストダウンをご提案します。

成形部品を量産できるプレスメーカーを探している

自動車部品で培った量産体制で、継続的な供給に対応します。量産先の変更もご相談ください。

絞り加工・張り出し加工はトルク工業へ

トルク工業では、金型の自社設計・工程設計・低温焼きなましを組み合わせ、割れ・しわ・変形を抑えた絞り・張り出し・バーリング部品を安定した品質で量産しています。

成形部品の新規製作、割れ・しわ・変形などの品質課題、溶接品・切削品からの置き換え、量産先の変更などをご検討の場合は、お気軽にお問い合わせください。